アートセラピー(芸術療法)とは
アートセラピー(ArtTherapy)とは
アートセラピー(ArtTherapy)とはアートを用いた心理療法。アートによる自己表現を通して心の健康をめざします。
自分の気持ちや感情を「言葉」で表現するのはむずかしいものです。しかしアートなら、モヤモヤした気持ちをそのまま表現することができ、アートを通して自分の心の状態に気づくことができます。
アートセラピーの「アート」は絵だけでなく、粘土や造形・箱庭・コラージュのほか、音楽・ダンス・身体表現・詩歌・写真などのあらゆる芸術表現を含みます。
アートセラピー(ArtTherapy)はアメリカやイギリスで発展し、日本に伝わりました。
日本語では「芸術療法」ですが、芸術というと敷居が高いため、そのまま「アートセラピー」とよばれることも多いです。
アートセラピーの特徴
言葉がなくても表現できる
アートセラピーの最大の特徴は、言葉にできない心の状態を表現できることです。
自分の気持ちや考えを言葉で表現するのが苦手な方はもちろん、子どもや高齢者、病気や障害のある方も、アートセラピーに取り組むことができます。
作品という形にできる
アートセラピーでは、自分の内的世界を「作品」という形で外に表現することができます。
作品という形になることで、自分の気持ちを人に見せることができたり、自分の心の状態を客観的に見ることできるようになります。
分析しない・評価しない
アートセラピーで表現された作品には、クライエントの心の状態が表れていますが、セラピストは作品を分析したり、うまいへたで評価したりはしません。
分析や評価から離れたありのままの自己表現こそ、心の健康と成長につながります。
※詳しくはアートセラピーの特徴をご覧ください。
アートセラピーの種類
アートセラピーではあらゆるアートを扱いますが、それぞれの分野で独立したセラピーもあります。
○なぐり描き法
○家族絵画療法
○風景構成法
○コラージュ療法
○造形療法(粘土など)
○箱庭療法
○ダンス療法
○音楽療法(ミュージックセラピー)
○ドラマセラピー(サイコドラマ・心理劇)
○詩歌療法(俳句・連句療法)
など
アートセラピーを分類する場合に、
絵画を中心としたものを「アートセラピー(Art Therapy)」、音楽やダンスなども含むものを複数形の「アーツセラピー(Arts Therapy)」とよぶことがあります。
また後者のようなものを
「表現アートセラピー(Expressive Arts Therapy)」とよぶこともあります。
「アートセラピー」という言葉がどこまでの範囲を指しているかは、文脈により様々なので気をつけましょう。
本サイトでの「アートセラピー」は、「アートセラピー・アーツセラピー・表現アートセラピー」など、あらゆるアートセラピーの総称として使っています。
アートセラピーの危険性
アートセラピーは心の深い部分にアクセスしやすいのが利点ですが、意図せずにネガティブな感情を引き起こしてしまう危険性もあります。
特に精神的・身体的に不安定な状況でのアートセラピーには十分注意しましょう。
阪神大震災や東日本大震災のときも、心のケアのために実施されたボランティアのアートセラピーで、不用意に心の傷を深めてしまうケースがニュースになっていました。
アートセラピーは、きちんとしたトレーニングを積んだセラピストが医師や専門家と連携し、安全な環境で継続的に実施されることが大切です。
クレヨンや粘土、フィンガーペインティングのように、心の退行現象(子ども返り)を起こしやすい画材もあります。
セラピストの力量とクライエントの状況を考慮したセラピーを心がけましょう。
「治療」としての狭義のアートセラピー
アートセラピーに限らず「セラピー」というのはあいまいな言葉です。
本来の英語の「Therapy」は「治療・療法」という意味ですが、アロマセラピーやカラーセラピーのような「○○セラピー」には「癒し・リラクゼーション」のイメージが強いのではないでしょうか?
アートセラピーは「治療」と「癒し」の両方の意味がまざって使われているのがややこしい現状です。
ここでアートセラピーの本場、アメリカとイギリスでのアートセラピーの定義を紹介します。
米国アートセラピー協会
(AATA:American Art Therapy Association)
「クライエントがアートセラピストの助けを得ながら、感情を探り、情緒的な葛藤を調停し、自己への気づきを育み、行動や依存を制御し、社会技能を向上させ、現実への態度を改善し、不安を減少し、自尊心を高めていくために、アート素材や創造的プロセスや完成した作品を用いる心の健康の専門職である」
英国アートセラピスト協会
(BAAT:British Association of Art Therapists)
「アート素材を表現とコミュニケーションの主要な様式として用いる心理療法の1つの形態」
米英で発展した狭義のアートセラピーは「アートを用いた心理療法」、つまり心の病を治す治療のためのセラピーです。
いわゆるヒーリングアートや、リラクゼーション・レクレーション・能力開発を目的としたものはアートワークであり、狭義のアートセラピーには含まれません。
心理療法でのアートセラピーでは、芸術的技能の向上は目指しませんし、基本的に描かれた作品を展示して人に見せることもありません。
「癒し」としての広義のアートセラピー
一方、アートセラピーと聞いて一般的にイメージされるのは「癒し・リラクゼーション」としてのセラピーだと思います。
比較的健康な方を対象とした、メンタルケア・ストレスケア・癒し・自己実現などが目的の広義のアートセラピーです。
ストレスが病気の原因になることも多く、両者を明確に区別するのは難しいのですが、医師や専門家が行う「治療」と、その他の方が行う「癒し」は区別しておいた方がいいでしょう。
私は、小さなストレスを感じることの多い現代社会では、気軽に受けることのできる癒しとしてのアートセラピーは重要だと考えています。
当サイトでは、狭義のアートセラピーと広義のアートセラピー、どちらも紹介しています。
参考文献・おすすめの本
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